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東京高等裁判所 昭和36年(く)121号 決定

少年 N(昭一七・一一・二生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告申立の理由は申立人提出の抗告申立書記載のとおりであるから、これをここに引用し、これに対し次のとおり判断する。

所論に鑑み本件記録並に添附記録を精査すると、原決定理由として説示している事実は充分これを認めることができるのであつて、原決定が少年は仮退院の際定められた遵守事項を守らず、更に非行を重ね、在宅保護の措置を以ては少年の性格の矯正とその健全な育成を図ることができないと認め、少年を満二〇歳に達するまで中等少年院に戻して収容する旨決定したのは相当であつて、所論の総べてを参酌するも原決定にはいささかも不当の廉は存しない。

よつて本件抗告はその理由がないから、少年審判規則第五五条少年法第三三条第一項に則りこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 渡辺好人 裁判官 目黒太郎 裁判官 深谷真也)

参考

原審決定(東京家裁 昭三六(少ハ)一〇八号 昭三六・一一・七決定)

主文

少年を満二〇歳に達する迄中等少年院に戻して収容する。

理由

(1) 少年は、昭和三六年九月二九日印旛少年院を仮退院して表記住居の雇主○木○三氏方に帰住して静岡保護観察所の保護観察を受けていたが、遊惰放浪の癖がぬけず誓約した遵守事項を守らず、職場において金を窃取し、或は同僚の少年から金をまきあげて家出浮浪して保護観察の方針から逸脱し、更に犯罪の危険性ある状態に陥つていたものである。

如上の事実に鑑みれば、関東地方更生保護委員会の戻し収容申請(昭和三六年一〇月三一日附)は、その理由があるものと思料される。

(2) 問題点

(イ) 知能やや低く視野が狭く、意思と感情の抑制が出来ず衝動的な行動に出る。

(ロ) 保護能力が家庭になく、母親も再度の収容もやむなしと考えている。

(3) 少年の生活史及び現在の環境等本件調査審判に現れた一切の事情を考え合せると、少年の非行性はとうてい在宅保護の措置ではこれを除くことができないと認めることができる。そこで少年に対して再度嬌正教育を施し心身陶冶と更生の機会を与えその健全な育成を図るため、少年法犯罪者予防更生法第四三条及び少年院法の各規定を適用して、少年を満二〇歳に達するまで中等少年院に戻して収容することとする。

仍つて主文のとおり決定する。

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